「ドイツさんはイタリアくんと私、どちらが大事ですか?」
日本の家の縁側に腰掛け、ドイツがお茶に口をつけようとした瞬間、日本が訊ねてきた。
「…どちらも大事だ」
卑怯だとも思ったが、そう答えるしかなかった。
ドイツは一口、お茶を啜る。
それを見て、日本は笑った。
いつもの笑顔ではなく、凶悪ささえ感じる笑顔だった。
そんな日本の笑顔を見るのは、初めてだ。
「そのお茶に致死量の毒を入れておきました」
「……は?」
「真面目に答えてくれれば、解毒剤をお渡しします」
「……冗談、だろ……?」
「冗談を言っているように見えるんですか」
そう言う日本の顔は、やはり真面目腐った顔をしている。
嘘を言っているようには見えない。
手にした湯飲みの中の液体を一瞥し、ゆっくりと床に置く。
「……お前こそ、昔何人の男と付き合っていたんだ?」
「え?」
「引き篭もっていた頃はオランダとしか付き合いは無かったらしいし、
他にもイギリスとも付き合っていたのだろう?」
「引き篭もっていたって……中国さん達とも交流してましたよ。
オランダさんだけが特別じゃありません。
イギリスさんとは同盟を結んだだけです。ただのお友達です」
ドイツの言葉に、日本もムッとして答える。
「だが、寝たんだろう? オランダともイギリスとも」
「な……っ」
「俺は何人目の男だ?」
バシーン。
乾いた音が、響いた。
日本が、ドイツの頬を平手打ちしたのだ。
庭先で遊んでいたぽちとたまが怯えて垣根の下に隠れる。
「わかってるんですか?
今、ドイツさんの命は私が預かっているんですよ?
解毒剤を飲まなかったらドイツさん、死んじゃうんですよ?」
「お前の傍で死ねるのなら本望だ」
「………」
床に置いた湯飲みの中身を一気に飲み干し、ドイツは日本の目を真っ直ぐに見詰めながら動揺も見せずに言う。
何も言い返せず、日本も黙ってドイツの目を見詰めていた。
だが、すぐに懐から何やら小瓶を取り出し、その中身を口に含んだ。
そしてドイツに顔を近付けていく。
唇を重ね、口の中の液体をドイツの口の中へと押し流す。
こくんと、喉へと流し込む。
どうやら、解毒剤らしい。
「……ばかなひと……」
「ほんとうに」
ただ、嫉妬していただけだった。
オランダに、イギリスに、中国に、アメリカに。
それに……イタリアにも。
目の前で、今にも泣き出しそうな顔をして睨んでくる日本は、まるで張り詰めていた糸がぷつんと切れるように口づけてきた。
唇を割って舌が入ってくる。舌と舌が絡み合う。
「私は、ドイツさん以外と寝た事なんてありません。
イタリアくんより私を選んでくれないと嫌です」
「もし本当にお前が困っている時は、イタリアを見捨ててでもきっとお前の傍に行く。俺は、お前の特別な存在になりたい」
唇を離し、お互いの目を見詰め合い、その瞳の奥に嘘偽り無い本心を読み取ると、再び口づけた。
まるで、それがお互いの愛の証であるように。
<完>