+++ 写真立て +++  その写真立てには、二人の人物が写っていた。  肩に届くか届かないかぐらいの長さのクリーム色の髪。  優しげな茶色い眼。  弓の形をした、微笑を浮かべている口元。  幼さの残る、美しい容貌。  まるで双子のようにそっくりなその二人の人物は、姉弟だ。  風影の妻となった、加流羅。  加流羅の弟で、風影と早夜の間に生まれた三人の子 ――テマリ、カンクロウ、我愛羅――の世話係をしていた、医療班の夜叉丸。  風影でも側近の者でも、良く間違えた程、二人はそっくりだった。  バキは、その二人を映した写真を写真立てに入れ、机の上に飾っていた。  その写真をふとした時に見付けた我愛羅は、書類やら巻物やらを整理しているバキを尻目に、 その写真立てを手に取りまじまじと眺めた。 「……俺を、恨んでいるのか?」  ふと、突然我愛羅はそんな事を訊ねてきた。  驚き、バキはそんな部下の顔を見た。  我愛羅は、相変わらず無表情だ。だが、何となく悲しげな面影をしている。 「何故だ?」 「バキは、母さんも夜叉丸も愛していた。その二人を殺したのは、俺だ。俺が、殺したんだ」 「…………」 「恨んで、いる、のか?」 「何故、お前を恨まなきゃならん?」  自分と、夜叉丸が愛し合っていて、付き合っていた事は確かだ。  それ以前に、何故お前は俺が加流羅を愛していた事を知っているのかを訊ねたかった。  自分が加流羅と出逢ったのは、風影の婚約者として、だ。  この想いは、自分の中に隠し通してきたつもりだった。  夜叉丸には気付かれてしまったようだが。  それも、我愛羅が生まれる前の事だ。 「お前だって、殺したくて殺したわけじゃない。お前が、悪いわけじゃない。……いや。お前は、悪くない」  加流羅と夜叉丸二人が写っている写真を収めた写真立てを我愛羅から優しく取り上げ、机の上の元の場所に置いた。 「……じゃあ、風影が悪いのか?」 「………風影様は、風影様なりに、里を心配していたんだ」 「…………」 「それより、何故、お前は……」 「報告書の提出は、今日の正午までだ」  我愛羅のその言葉にハッとして壁に掛けられた時計を見た。  現在の時刻、午前十一時四十分。 「早く言え!」  我愛羅にかけようとした問いも忘れ、バキは今書き終えたばかりの報告書を手に、瞬身の術で姿を消した。  何故、先生が母さんを愛していた事を俺が知っている、か?  そんな事を、訊きたいのか?  母さんも、気付いていたみたいだ。  いや、母さんはもしかしたら、父さんよりも……。 〜終〜